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当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/

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町に埋もれる



09.11.22

edwin パラレル
一応恋人?デートの待ち合わせの時、ふと感じたこと。



 人混みは嫌いだ。街に埋もれる多くの人と同じように街の色に染まることが出来ない自分がいるのを強く感じるから。自分にとって周りを歩く人間が「自分以外のその他大勢の存在」ということを強く感じるから。たったそれだけのことが酷く寂しく感じるのは頬を掠める冬の風があまりに冷たいせいだ。そうに違いない。そうひとりごちた。
 そんなオレになんか目もくれずイルミネーションは輝き街を照らし続ける。


街に埋もれる


 絶えることのない人混みの中、オレは彼女を待っていた。人の出入りの多い入り口を避けた屋外で。店の壁に寄りかかりながらどうせなら屋内――例えば目の前に広がるビルの中――を待ち合わせの場所にしておくべきだったな、とオレは小さく後悔した。
 クリスマスまであと一ヶ月ということで、街はどこか浮き足立っていた。華美な電飾やサンタの置物などがそこらに飾られていて、オレはそれをどこか冷めた目で見ていた。オレにしてみればクリスマスまで「まだ」一ヶ月もある、のに。
 この時期は嫌いだ。冬の寒さのせいで、幸せ一杯の笑みを浮かべた家族連れや恋人同士の姿を見て少し感傷的になってしまう。冷たいと温かさが欲してしまうから。そんな自分を感じて、自分が酷く甘ったれた存在に思えてしまう、から。けれども、そんな感傷的な気分に浸ってるオレでさえもどうでもいいと言わんばかりに目の前の人々は素通りしていく。それに自分がひどくちっぽけでどうでもいい存在だと思い知らされる気が、して。この広い世界の冷たさを思い知らされる気が、して。だからこの季節は嫌いなんだ。ひとりそう思った。

「エド」

 ふと自分を呼ぶ声が、した。瞬間、感傷に浸っていた意識が現実に戻される。オレは顔を上げると慌てて辺りを見渡した。すると路地の向こう側で「ここにいるよ」と言うように手を上げて立っている彼女の姿が目に入る。どうやら止めどなく流れる人の波に阻まれてこちら側に近付くことが出来ないようだった。
 オレは強引に人の波を割って入る。睨んでくる視線は気付かない振りをして、真っ直ぐに突き進んだ。そしてオレは彼女の目の前に立った。
 間近に見る彼女の顔は真っ赤で、息が弾んでいた。それを見て、彼女は急いできたのだということが安易に想像できた。ゆっくり来てもよかったのに。オレがそう思っているだろうことには気付かない様子で、「遅れてごめん」と謝罪の言葉をその色付いた唇から発した。
「仕事だろ?しょうがねえだろが」
 オレがそう言うと、彼女は安心したように頬を緩める。その顔がなぜか少しだけオレを安心させた。
「それにしても、今日人多いね」
 彼女は乱れた髪を直しながら辺りを見渡してそう告げる。その言葉を聞いて、オレはまた少し後悔した。彼女の視界に入りやすいもっと分かりやすいところに立っているべきだったかな、と。そう思い、詫びる。
「わりい、もしかして見つけにくかったか?」
「ううん、大丈夫」
 
「あんたなら、どこにいても一目で見つけられるもん」

 目立つからね、と彼女言って彼女は笑った。軽口のつもりなんだろう。というか、軽口なんだろう。けれども。冬の隙間風が入り込んだオレの心をその言葉は少しだけ。少しだけ、オレを温めてくれた。とはいえ、ただの軽口なのだから。彼女にこの気持ちを悟られまいと言葉を紡ぎ出した。
「オレも、お前がどこいたって一目で分かるよ」
「どういう意味?」
「お前みたいな機械オタ、そうそういないからな」
「うるさい、科学オタク」
 そう言って笑いあう。軽口を、交し合う。そういうことにしておいた。軽口ということ、に。なんだか自分が酷ください存在に思えた。彼女のなんでもない言葉が酷く愛しく思えてしまった、なんて。まったく、柄でもない。ああ、こんなこと思ってしまうのはやっぱり。冬の風が冷たいせいに違いないんだ。 
 なあ、多分。オレが人ごみに紛れても、必ずお前はオレを見つけるんだろう。だってオレにとってお前がそうであるように、お前にとってオレは「自分以外のその他大勢の存在」の中の、大切なひとりだから。幼馴染であり、家族であり、オレの冷えた心に熱を与えてくれる「自分以外のその他大勢の」の中、の大切なたったひとり。そのひとりがいるだけでこの冷たい世界の色が違う色に見えてしまうのだから、不思議なものだ。
 
 不意に乾いた風が吹く。冷たい冷たい冬の風。オレはとりあえず、彼女に店に入ろうと言う。それに彼女は頷いた。それを確認して、オレは彼女の手を取った。彼女はそれに少し驚いた顔をして見せる。
「はぐれるだろ」
 そう言うと、彼女は微笑ってオレの手を強く握り返す。
 そうしてふたり街に埋もれて行く。イルミネーションが優しく照らす光の中に。



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