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当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/

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世界で一番好きな色



09.11.13

edwin パラレル
恋人。紅葉狩りに行って。



 あたしの視界を紅が覆い尽くす。世界で一番綺麗な紅が。風が吹いて、紅葉の葉があたしの目の前をひらひらと待った。その様すら風情があって綺麗だ。紅に、魅せられる。
 あたしはふと思いついて、落ちてくる紅葉の葉を前に手を合わせた。パチリ、と辺りに音が響く。合わせた手の中身は空っぽで、少し悔しくなった。

「なにしてんだ?」
 彼が呆れた様子で話しかけてきた。あたしは「年甲斐もなく子どもっぽいことをしてしまったな」と思って少し恥ずかしくなる。はにかみながら彼の問いに答えた。
「桜の花びらを落ちる前に捕まえると、幸せになるってジンクスがあるでしょ?」
「それの紅葉応用版?」
 返事の代わりにあたしは微笑う。「阿呆か」と言って、彼も微笑った。


世界で一番好きな色


 今週は紅葉が見頃だとニュースで報道されていたのを見たのは、4日前のこと。だから今週紅葉を見に行こうという話になったのも、同じその日のこと。それを邪魔するかのように強い雨が降ったのは、つい前日のことだった。それは天気予報をも見事に裏切った、予想外の雨だった。あたしたちにとって幸いだったことは、昨日の天気が嘘のように今日という日が絶好の紅葉狩り日和になったことだった。空は青々としていて、山はニュース通りに見事に綺麗な紅に染まっていた。けれども、強い風と雨に当てられたせいか紅葉の木々は少し禿げかけてきてしまっているように感じた。この分じゃ近々全部綺麗になくなってしまうかもしれないな。地に着地した紅葉の葉は、あたしをちょっとだけ悲しくさせた。またひとつ季節が終わる。終わってしまうのだ。それが、それだけのことが、なんだか少し切ない。
「せっかく綺麗なのに、もうすぐきっと全部葉っぱ落ちちゃうんだろね」
 あたしはしんみりとそう呟いた。残念で仕方ないという気持ちをその声に滲ませて。すると、彼は紅葉を眺めながら言う。

「また来年見にくるからいいだろ」

 その口調は、まるで太陽が東から昇って西に沈むのは当たり前だろう、というような音の響きを持っていた。あたしは、確かめるように彼に尋ねる。
「またふたりで?」
「ふたりで」
 彼の言葉は素っ気ないものだったけど、あたしを嬉しくさせるには十分のものだった。多分彼は自分の今の言葉にどれだけの重要な意味が含まれているかなんて気付いてないけれども。何気ないさり気ない言葉だったかもしれないけれども。それでも、あたしを嬉しくさせるには十分すぎる意味があったのだ。季節がひとつ終わりを告げても、または始まる新しい季節を一緒に過ごしていこうという、意味。そしてそれを繰り返して、来年も当然のように一緒にまたこの紅を見に来ようという、意味。「約束」というにはあまりに脆い、「願い」だとか「望み」とも言えるようなそれが、あたしは嬉しくて嬉しくて堪らない。
 あたしの顔は知らずに真っ赤に染まってしまっていたようで、彼はその顔を見て「寒いのか?」と呑気に尋ねてきた。まったく、あたしの気も知らないで、こいつは。少し恨めしい気持ちになりながら、「寒くないよ」と答える。すると彼は「そっか」と言って、すぐにその視線を元に戻した。ああもう、鈍感。あたしの今の想いはどうしたらこの鈍感な彼と分かち合えるのか。紅葉を眺めながら考える。
 ふと風が吹く。さっきと同じように、紅葉の葉があたしの目の前をひらひらと舞った。そして閃く。

 あたしは次の瞬間「あ!!!!」大声を上げ、手を合わせた。パチリ、と辺りに音が響く。彼はその音に驚いて振り向いてきた。
「紅葉とった」
「え」
「ほら、ちゃんと見て」
 私は微笑みながら合わせた手を開きかける。彼は少し屈んであたしの掌に包まれているだろうそれを覗き込んできた。あたしはその機を逃さずに素早く背伸びをする。そして。

 ちゅっ。

 一瞬彼の時間が止まった。けれども、次の瞬間にはちゃんと動き出して「なにがなにやら」という顔をしながらあたしの掌に包まれているだろう、それへと視線を移す。けれども、あたしの掌の中にはなにもなくって。彼はあたしにされたことに気が付いたようだった。即ち、あたしにからかわれたということ、に。
 彼は怒ったように「てめえ」とあたしを睨む。でも、その瞳に浮かんでいるのは怒気なんかではなくて、別のもの。そしてその顔はまるであたしたちの周り一杯を覆い尽くすそれの色のようで。あたしはそれが可笑しくて込みあげてくる笑いを我慢出来ない。彼の「笑うな、馬鹿」と言う台詞もあたしを益々嬉しくさせる材料にしかならなくて。あたしは顔を真っ赤に染めて声をあげて笑った。その時、彼には見えなかっただろうけれどもあたしの掌は確かにあるものを掴んでいた。温かな幸せとでも言うことが出来るような、それを。


 世界で一番綺麗な紅は紅葉。けれども、あたしが世界で一番好きなの色は違う色なの。あたしが世界で一番好きなのは、紅葉のように染まるその色。
 ねえ、来年も十年後もどれだけ年をとっても。あたしにその赤を頂戴。



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