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当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/

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譲れないものがある


edwin(原作 未来)
両想い。男には譲れないものがあるというお話。




 喧嘩のきっかけなんていつも些細なことにすぎない。けれでも、始まってしまったら引くに引けない状況というものがあるものだ。悲しいことに、男ならば猶更。男に二言はないという言葉があるように、オレは引くわけにはいかなかった。「オレには譲れないものがあるのだ」と、オレは断固主張する。すると、彼女は「馬鹿みたい」と溜め息混じりに呟いた。
 それが一週間程前の話。
 



譲れないものがある




 窓の外には長閑な景色が広がっていた。燦燦と降り注ぐ陽の光を受けた緑も小鳥のさえずりもどこまでも澄み切った青空も。まるでそのすべてが「平和」というものを具現しているかのようだ。なのに、だ。平和の象徴のど真ん中にいる筈のオレたちの様と言ったら。
 彼女は今朝もオレと目を合わせることもなく、また、会話を交わそうとさえしなかった。まったくもって可愛くない女だ。彼女が「ごめんね」と一言言いさえすればすべて収まる話なのに。彼女がその一言を言いさえすれば飯を食い終わるや否やそそくさと部屋に帰ることもないし、オレだって弟やばっちゃんに冷たい視線を向けられることもないのに。なあ、オレは平和主義者なんだよ。「だから謝れ」とオレは彼女が去った朝食の席でひとりごちる。そうして暫く佇んでいると、オレの目の前に大きな影が出来た。
 大きな影の持ち主は腹に据えかねたような面持ちでオレの目の前に立っていた。それはオレの前に聳え立つ大きな壁のようでもあった。けれども、それはある意味で「正しい」と言えるだろう。なぜなら、弟はいつも彼女の味方であるから。だから、弟がオレに言うべき台詞なんて聞くまでもなかった。聞きたくもなかった。けれども、目の前に立ち塞がる壁は容赦なくその言葉を放った。「兄さんが謝りなよ」と。けれども、オレは謝る訳にはいかなかった。喧嘩のきっかけなど最早覚えてなどいなかったが、「オレは絶対譲らない」と言ったことだけは確かに覚えている。そう言った手前、オレは謝る訳にはいかなかった。というか、なんでオレばっかり謝らなくちゃいけねえんだよ。そういう訳だから「そういうことなんだ」と諭すようにオレは弟に話しかける。
「オレが悪くもねえのに、謝ったら負けだろうが」
「喧嘩って勝たなきゃ駄目なの?」
「決まってるだろうか」
「そんなの喧嘩じゃないよ」
「喧嘩は喧嘩だろうが」
「兄さんはウィンリィに勝ちたいって訳?」
「理解ってもらいたいだけだよ、オレは」
「でも、結局は傷付けてるだけだろ」
「なにが言いたいんだよ、お前は」
「ただ傷付けあって勝ち負け決めるのはさ」
「うん?」
「喧嘩っていうよりも戦争に近いんじゃないかな」
 そうして、弟は「戦争は嫌いだよ」と告げた。その心底残念がっているような姿に已むなく同意する。オレだって戦争なんか好きじゃない。オレは平和主義者だから。そう言うと「ならするべきことは分かっているよね?」と言うかのように笑ってみせた。というか、弟の瞳が口が表情がそう言っていた。
 お前というやつは。血の繋がっているやつ兄よりも幼なじみが大切なのか。男に「女に白旗を振れ」と言ってるのか。オレは言葉を返したかったけれども、生憎返す言葉を持っていなかった。オレは彼女に勝ちたい訳でも彼女を負かせたい訳でもなかったし、仮にオレたちのこれが戦争なのだとしても弟が彼女に味方になった時点で勝ち目はなかったから。オレは観念して大人しく弟に腕を引かれる。行く先は言わずもがな彼女の元だ。

 弟が彼女の部屋をノックする。すると、高い声が部屋の内側から聞こえた。それはオレにとって一週間ぶりに聞く懐かしい音だったのだけれども、オレは努めて冷静な振りをした。弟に動揺してるなんて気付かれる訳にはいかなかったから。けれども弟はオレの様子に気付かずに「今大丈夫?」と呑気そうな声で彼女に尋ねる。返事の代わりにドアが開いた。運命のドアにしては、実に呆気なく。
 ドアが開くや否や弟はオレを部屋の中へと押し込んだ。そうして「仲良くね」なんて余計な一言を捨て吐いて素早くドアが閉まる。ドン、という乱暴な音がふたりっきりの部屋に響いた。その一寸の無駄もない行動にふたり揃って呆然とする。けれども、次の瞬間には彼女は精一杯の恨みを込めた表情をその小さな顔に貼っつけていた。そして実に一週間ぶりにオレに対して言葉を吐いた。
「なにをしにきたのよ」
 「なんて可愛くない第一声だ」とオレは思う。というか、「なにを」なんて。お前も分かっているくせにと胸の内で呟く。でも、オレも「その言葉を言わなければならない状況である」ということを分かっていたから。正直とても悔しかったが、大きく息を吸って吐く。そうしてその言葉を放つ準備をした。けれども、その言葉を彼女の瞳を見つめて吐くのは勇気が要ったから。オレは彼女の足元に視線を落とした。すると、陽の光が彼女の白を更に白く染める、そんな光景が目に留まった。ああそうだ、そういえば。
 オレは静かに思い出した。そういえば彼女のスカート丈からこの喧嘩は始まったものだった。オレはお前のよき恋人として実に適切且つ的確な助言をしただけだった。お前のために。そして、ほんのちょっとだけ自分のために。オレは正しい。間違っちゃいない。オレは一週間経った今でもそう断言する自信があった。自信だけじゃなく、根拠も。けれども、このまま喧嘩を続けて。それでそいつを手放すことになるのも阿呆らしい話だ。オレは手放したくなんかなかったから、適切且つ的確な助言をしたのというのに。本末転倒だろう、そんなのは。なんだか自分がひどく馬鹿らしいことをしているように思えてきた。
 そんな思いを吹っ切るように次の瞬間、彼女を腕の中に閉じ込める。
 腕の中の膨れっ面に向かってごめんと一言だけ告げた。少し間を置いて、「譲らないんじゃなかったの?」なんて彼女の憎まれ口が聞こえた。ああ、もう。なんて可愛げのない女。
 オレは平和主義者だから戦争も喧嘩も望んじゃいない。望んでなんかいないんだ。だから彼女のそれには気付かない振りをして。そうして開けば文句しか言わぬそれを素早く塞いだ。


 オレは少しも譲るつもりなんかねえよ。
 お前には分からないかも知れないけどさ。
 男にはどうしても譲れないものがあるんだよ。悲しいことに。

 そうしてオレは「それ」を逃すまいと更に力強く抱きしめる。














***
最後抱きしめちゃったから、未来話にしました。
ミ.スチルの『口.がすべって』だとか、ス.キマの『飲.みの来ないか』だとか。
そうゆうのイメージしながら書いた喧嘩話。
てか、喧嘩話書きすぎですね。すんません。
本当に譲れないものの前ではなんだって譲れるんじゃないかと思います。
でも、本当に譲れないものを譲る訳にはいかんのです。

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