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当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/

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レイニー・デイ

 

09.10.30
edwin 原作(未来)
恋人。大雨の日のお話。



 子供の頃、雨は嫌いだった。理由は単純で、「ふたりと遊ぶことが会うことが出来ない」から。あたしの知らないところであたしのことなんか忘れて楽しんでいるだろうふたりのことを思うと寂しくてしょうがなかった。雨なんて一生好きになることができないとすら思っていた。そんなあたしを宥めるようにばっちゃんはよく話をしたものだ。雨は『恵みの雨』なのだと。恵みの雨が全ての生命に降り注ぐから、あたしたちは生きていけるのだ、と。だから、恵みの雨に感謝なさい、と。でも、そんな話をされたところで雨の日にふたりに会えない事実が変わるわけでもなくて、感謝なんてすることは出来なかったし、寧ろ益々雨が嫌いになるだけだった。


レイニー・デイ


 あたしは少し大きめのシャツを羽織って窓の外の景色を眺めていた。そこには、一面灰色の景色が広がっていた。そう言えば昨日から天気が悪かったな、と思った。雲行きは怪しかったし、風も多少強かった。だから、少しぐらいは天気が崩れてしまうかもなと予想はしていたのだ。けれども、こんな大雨になるなんて流石に思ってもいなかった。それでも何年か前の大雨の時のように川が決壊する程には酷くはなくて、それに少し安心しながらこの先どうなるのだろう、と考える。雨脚について、ではなく軍部に電話をしている彼の予定について。
 彼は本来ならばもうここにはいない筈だった。もっと言えば、今頃はセントラル行きの汽車の中にいる筈だったのだ。軍部へのレポートと荷物と彼自身のアパートの鍵を持って。そんな彼の予定を狂わせたのは所謂『恵みの雨』と言うやつ、だった。彼は「この雨では今日は汽車は動かないだろう」と言っていた。その旨について彼は今軍部に連絡を入れていたのだ。不謹慎かもしれないけど、あたしは少しだけ期待をする。でも、期待を裏切られて傷つくのも嫌だから、ただただ彼の報告をベッドの上で待っているのだ。
 ふと、階段をのぼってくる足音に気が付いた。あたしはベッドの上から少し身を乗り出すように座り込む。そして、まるでそれが合図だったかのようにドアが開くのと同時に話しかけた。
「どうだった?」
「この雨じゃ来れないのも納得せざるを得ないだろ。とりあえず今日は様子見て、明日にでも軍部に報告に伺うように、だとさ」
 そう言って彼はあたしの隣に座り込んだ。「さびー」とその何も羽織っていない肩を擦りながら。そしてあたしの顔を見る。すると、なぜかその眉毛がハの字の形になった。不快だとかそういうことじゃなくて、なにかを疑問に思ったようなそんな顔。
「なに?」
 思わず聞き返すと、彼は言った。
「『なに?』はオレの台詞だ。なんでそんなに嬉しそうなんだよ?」
 彼の言葉で、自分の頬が緩んでいたことに初めて気付いた。思わず手で頬を隠す。けれども、隠したところで、自覚したところで、その頬の緩みを抑えることなど出来そうになかった。
「雨も悪くはないよね」
 そう言うと、またもや彼の眉毛がハの字の形になる。
「なんなのよ?」
 またもや問い返す。すると、彼は言った。
「お前、雨の日嫌いじゃなかったか?」
「え?」
「だってお前、雨降った次の日にはオレとアルに『昨日はなにしてたんだ~!!!!』って凄い剣幕でしつこく訊いてきてたろ?あと、雲行きが怪しくなったりすると大量にてるてる坊主作ったりしてた。お前単純なガキだったな」
 そう言って彼は微笑った。余計な軽口は気に入らなかったけど(彼はいつも一言多いのだ)少しだけ、ほんの少しだけ嬉しくなった。彼はなんだかんだ言っても、たとえ子供の頃あたしのことを忘れて遊んでいたことがあったにしても、「あたしのことを気にかけてくれてたんだな」と感じる。小さい頃から一緒に居すぎてお互いのことが分かりすぎる程分かっちゃってるだけかもしれないけれども。あたしはその事実にまた頬を緩めて答えた。
「でも、今は昔程雨は嫌いじゃないよ」
「ガキじゃなくなったから?」
 彼はどこか茶化すように問いかけてきた。けれども、あたしはその問いにいたって真面目に言葉を返す。
「そうよ、大人になったから」
 すると、彼は一瞬少し驚いた顔をしたあと、少し呆れた顔をして「そうかよ」と言った。彼はその素肌を「あたしの言葉が寒々しかった」と言わんばかりに擦った。ふと、空気の冷たさに気付く。或いは本当に寒いのかもしれないなと思った。そして、ブランケットを手に取った。
 冷えないように、温かくなるように、あたしは彼の剥き出しの肩にブランケットをかけながら、言う。
「じゃあ、もう一日一緒にいれるね」
 そして、彼の肩に寄りかかる。
「寒いから、あたしも入れて」
 そう言うと、あたしの身体はあっという間にブランケットの中の彼の腕の中に収まった。そして、彼はあたしの額に髪に鼻に唇に温かいキスを落とす。
 あたしは彼の温度を感じながら心の中で言葉を繰り返した。「そうだよ、大人になったんだよ」って。そうして、あたしたちは灰色の世界からは隔離された純白の世界にふたりきりで潜り込む。雨は、まだ当分止みそうにない。

 子供の頃は無理だったけど、今なら『恵みの雨』とやらに感謝できる。少なくとも、今あたしたちに降り注いでいるのは、それだから。
 本当は今も少し雨は嫌いだ。けれども、君とこうして一緒に居れる理由を、時間を与えてくれるのならば、昔よりほんの少しだけ愛せないことも、ない。



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