忍者ブログ

カレンダー

05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

about

当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/

プロフィール

HN:
とも
性別:
女性
職業:
社会人一年生

カウンター

アクセス解析

バーコード

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

プレゼント



other(パラレル)
幼なじみ。現代パラレル。小さい頃のクリスマスのお話。

 







 エドとアルとウィンリィの三人はいつも仲良しな幼なじみでした。
 エドとアルのお母さんはふたりが幼い頃に病気で亡くなってしまいました。お父さんもいましたが、仕事柄家を留守がちなために、ばっちゃんがエドとアル、それからひ孫のウィンリィを分け隔てなく育てました。だから、三人はいつも一緒でした。血がつながっていなくとも家族同然であると感じる、お互いにお互いがかけがえのない存在でした。
 三人はいつも元気でした。しかし、そのやんちゃさが過ぎて何をするにも怒られるのでした。ある時は雑貨屋さんの窓に野球ボールが当たってしまったのでした。ある時は電気屋さんの駐車場にチョークで落書きをしてしまったのでした。またある時は、サッカーで遊んでいて花屋さんの植木鉢を倒してしまいました。そんなやんちゃな三人に大人たちは口々に言いました。「悪い子のところにはサンタが来ないぞ」と。三人はそう言って怒られる度に反省しました。しかし、三人はそれでもいろいろな問題を起こしてしまうのでした。けれども、毎日怒られて悲しくなっても三人は笑っていました。三人にとって、三人で過ごすということはそれだけで怒られることが帳消しになるような何よりも価値があることでした。三人はいつも笑っていました。
 ある日、さんにんのうちのひとりの笑顔が消えました。外国へ人々を助けるために旅立っていたウィンリィの両親が事故に巻き込まれて死んでしまったからです。
 クリスマスまであとひと月という日に届いた報せでしたでした。その日は、とてもとても寒い日でした。





プレゼント





 報せが届いたその夜に。ウィンリィは、エドとアルの前で一回だけ泣きました。ウィンリィは「お父さん、新しいツリーを買ってくれるって言ってたのに」と言って、泣きました。その涙は約束を破られたからというだけの涙なんかではなくて、もっともっと大きなことを悲しんだ涙なのだということをエドとアルは分かっていました。
 それ以降、ウィンリィはお父さんとお母さんのことで人前で泣いたりはしませんでした。けれども、心から笑ってくれることもありませんでした。
 そうして、街から三人が遊ぶ姿が消えました。ウィンリィがふさぎこんだために、部屋にひきこもるようになってしまったからです。なので、エドとアルは仕方なくふたりで遊ぶようになりました。けれども、ふたりだけだと何をやっても心から笑うことが出来ませんでした。ふたりだと、何かが足りないような気分になってしまうのです。それに、ふたりだけで笑おうとすればするだけ、ウィンリィの悲しい顔を思い出してしまうのでした。
 そんな日々はクリスマスが間近に迫ってきても続きました。ウィンリィは学校に通ってはいるものの、遊びに誘っても、「今度遊ぼう」とだけ言って作ったような笑みを浮かべるのでした。その姿を見るたび、ふたりは悲しくなりました。
 
ふたりは「ウィンリィに早く元気になって笑ってほしい」と思っていました。けれども、自分たちもまた大切な人を失ったことがあったため、なぐさめの言葉をかけるのはためらわれました。エドとアルだって大好きなおじさんとおばさんが死んでしまったことが悲しくて悲しくてたまりませんでした。けれども、きっとウィンリィは自分たちなんかが計り知れないほどに落ち込んでいるに違いないからです。軽はずみな言葉をかけたらウィンリィのことを傷つけてしまうことは子どものふたりであっても簡単に想像がつきました。だから、ふたりは考えたのです。「そうだ、贈り物を贈ってウィンリィを元気づけよう!」と。
 ふたりはウィンリィに何を贈るかを自分たちの家でひっそりと毎晩相談しました。そして一週間もの間悩み抜いた末に、ようやく決めたのでした。けれども、その贈り物を贈るためにどうするべきかふたりは迷いました。それは、ふたりのお小遣いでは足りないくらいに高価なものだったからです。
 何かを買おうとするためにはお金が必要になるというのは言うまでもないこの世の原則です。これくらいの対価で彼女の笑顔を得られるのならと思い、ふたりは意を決してパンダの貯金箱を割ることにしました。そのお金は、本当はクリスマスに高名な科学者の本の買うためにふたりが一年間コツコツと貯めていたお金でした。お菓子を買うのを我慢したり、家の手伝いをして得た、大事なお金でした。「少しも惜しくは思わなかった」と言えば、それは嘘になります。けれども、ウィンリィが元気になってくれることのほうが今のふたりにとってははるかに大事なのでした。
 そうして、ふたりは翌日にそれを決行することにして、その晩は布団に潜り込みました。
 
 翌日の朝、ふたりはいつも通りにウィンリィの家で朝ごはんを食べました。
 食卓でエドはトーストにベーコンエッグを乗せて齧り付きながら「今日、ちょっと図書館に出かけてくるから」と短く告げました。アルはサラダをつついていた手を止めて、ごく自然な笑顔を浮かべながら言葉を続けるのでした。
「今日、新しい本が入るらしいから行ってくるけど、晩ごはんまでには帰ってくるから」
 どこか言い訳のようにもとれる言葉を発したアルを、ばっちゃんは不思議そうに見つめ返しました。そんなばっちゃんの視線を避けるようにアルは慌てて目を逸らしました。その様子は明らかに不自然でしたが、エドとアルが図書館に出かけるのは日課でもあったので、ばっちゃんは別段ふたりをとがめるようなことはしませんでした。ただ、本に夢中になりすぎてたまにごはんの時間を忘れてしまうふたりに「あんまり遅くなるんじゃないよ」とだけ、小さく釘を刺したのでした。ウィンリィも、ふたりになにも問うたりはしませんでした。顔を俯かせながら、少し冷えたであろうコンソメのスープを銀色のスプーンでただ静かにすくっていました。
 ふたりはそれから家に戻って、昼までに掃除や洗濯などの家事を一通り済ませました。そして、パンダの貯金箱をカナヅチで割り、その中身を財布の中身にきちんと仕舞いました。そして、玄関で靴ひもを固く結んで。
 そうして、それから贈り物を買いに出かけたのでした。



 ふたりが最初に目指したところは、雑貨屋さんでした。
 緑のドアノブをひねると、ベルがチリンチリンと辺りに鳴り響きました。すると、レジ台のところから雑貨屋のお兄さんが顔を覗かせて「いらっしゃい」と愛想のない調子で言いました。それから、雑貨屋さんのお兄さんはふたりの顔を見るなり、「おお」と言って顔をにやつかせました。そして茶化すように尋ねるのでした。
「お前ら、また懲りもせずに悪戯しにきたのか?」
 エドは、その言葉に少し眉根を寄せて、小さく呟きました。
「店内でタバコ吸おうとしてるおじさんに説教されたくねえよ」
「なんだと?」
 次の瞬間、小さな笑い声が店内に響きました。ふたりが振り向くと、レジ台の近くに座っていた小太りのお兄さんが「違いねえ」と言って目頭を拭うような仕草をしました。どうやらその人は、雑貨屋のお兄さんの友だちのようでした。雑貨屋のお兄さんは、そのお兄さんとエドを交互に見ながら言うのでした。
「喧嘩を売りにきたのか、お前ら」
「買いに来たんだよ」
 エドのそのえらそうな態度に小太りのお兄さんはますます喜ぶかのように笑いましたが、アルはすっかり肝を冷やしたかのような様子でエドの服の袖をひっぱりながら言うのでした。
「兄さんのバカ!ああ、ごめんなさい、違うんです!ボクたち、ただ飾りが欲しいだけなんです」
「飾りだって?」
 雑貨屋のお兄さんは「なんで、そんな似合わないものを」とでも言いた気な様子で眉をしかめてみせました。それを見たエドが「文句あるか」という様子で唇を突き出してみせましたが、その様子を見たアルはこれ以上場の空気が悪くないよう「内緒ですからね」と前置きをして、理由を話しました。
 理由をすっかり話し終えると、小太りのお兄さんは顎に生えた髭に手を添えながら「ほう」と感心するかのような声を出しました。そして、雑貨屋のお兄さんも、少し驚いたように目を見開いてみせたのでした。
「なんかおかしいかよ?」
 エドはまたお兄さんたちを鋭く睨みつけました。けれども、その頬は赤く染まっていて、怒っているような口調になっているのは照れ隠しなのだということが、傍目から見てもはっきり分かりました。そんなエドを見て、お兄さんたちは首を横に振って、それから優しく笑ったのでした。
「いいや!女のためにだなんて、男らしいじゃねえか!」
「お前らの思いに免じて、ちっと値引きしてやるよ」
 エドとアルは先ほどとはうって変わってのお兄さんたちの優しい言葉に、一瞬ポカンとなって言葉をなくしました。しかし、すぐに我に返って「それは悪いよ」と首を横に振りました。けれども、雑貨屋のお兄さんは「いいから」と言って頑なに譲ろうとしなかったので、ふたりは素直にお兄さんの思いやりに甘えることにしたのでした。
 会計が終わると、「ありがとう」と言ってふたりは軽くお辞儀をしました。すると、雑貨屋のお兄さんは箱からタバコを取り出して「どーもな」とだけ言い、笑いながら手を軽く振りました。
 ふたりは店の扉のドアノブをひねり、店を後にしようとしました。緑色の扉が閉まりかける直前。ドアの隙間から、小太りのお兄さんの朗らかな声が後ろから追いかけてきたのでした。
「いいクリスマスを!」

 そして、ふたりは次に電気屋さんを目指したのでした。
 自動扉の先へと踏み入って辺りを見回すと、電気屋さんの店内が思ったよりも広いようことにふたりは気が付きました。ふたりは目的のものを探すために、店内をキョロキョロと辺りを見渡しました。すると、「やあ、君たちか」と言う声が不意に聞こえました。
 ふたりが驚いて声の方を振り向くと、そこには痩せた店員さんがいました。その店員さんは、三人が悪戯をした時に決まって三人を叱った人なのでした。なので、ふたりは少し罪悪感を感じ俯きながら「こんにちは」と小声で挨拶をしました。
「こんにちは。また悪さをしに来たわけじゃないだろうね?」
 痩せた店員さんが冗談混じりにそう告げると、またもやエドは眉根を寄せて不機嫌な顔をしてみせました。アルはそれを見て、慌てて「ごめんなさい」と詫び、それから尋ねるのでした。
「今日は用があって来たんですけど……」
「なんだい?」
「探してるものがあるんです」
 アルは、目的のものの場所が店内のどこにあるかについて教えてほしいと、店員さんに頼みました。すると、店員さんは即座に「ああ、それなら」と人差し指を上に向けて告げるのでした。
「階段から二階に上って、左から数えて三番目の一番奥の棚だよ」
 あまりに詳細な答えが返ってきたので、ふたりは思わず口を開けてポカンとしてしまいました。けれども、すぐさまハッとして、言われた棚の位置を憶えました。「記憶力いいんですね」とアルが感嘆の言葉を上げると、店員さんは照れ隠しをするかのように首元をかき、話題を逸らすのでした。
「それにしても、おつかいなのかな?偉いじゃないか」
 店員さんの言葉に、エドは「おつかいじゃないよ」と首を横に振ってみせました。そうして「内緒だけど」と前置きをして、理由を告げたのでした。すると、店員さんはその細い目をさらに細めて、口元を優しく歪めました。そして、「なんだ、やっぱり偉いじゃないか」と穏やかな口調で告げたのでした。
「がんばってね、ふたりとも」
 店員さんは、「じゃあ」と言って、片手をあげました。仕事に戻る背中に、お礼にふたりは軽くお辞儀をして、それから二階へと続く階段を昇りました。そして、店員さんの言われた通りの棚へと真っ直ぐに向かいました。すると、そこにはきちんと目的のものがあったのでした。ふたりは「すごいな」と顔を見合わせて、ひっそりと笑いました。
 ふたりは、それを持ってレジへと向かいました。二階には幸い人があまりいなかったので、レジも空いていました。ふたりは優しそうな眼鏡の店員さんに、それを手渡しました。眼鏡の店員さんは、エドとアルから受け取った商品をピッとバーコードでスキャンして、値段を告げました。エドとアルは言われた通りの値段を財布から用意しました。そして、眼鏡の店員さんが精算してくれるのを待ちました。けれども、眼鏡の店員さんは、精算をするのを忘れてしまったかのように、眼鏡の店員さんはふたりが持ってきた商品を、じっと食い入るように見つめ始めてしまったのでした。そんな様子が三十秒程続いて、しびれを切らしたエドが「あの」と不機嫌な様子で声をかけました。眼鏡の店員さんはその言葉を聞いて、すぐにハッとなり「すみません」と謝罪の言葉を述べてから、急いで精算しました。そして。会計が終わった後に、眼鏡の店員さんは突然「君たち、取り付け方分かる?」と、エドとアルに向かって尋ねたのでした。エドとアルは、いきなりの質問に少しだけ戸惑いましたが「説明書を見れば、分かると思います」と少し自信なさ気に答えました。すると、眼鏡の店員さんは辺りを少し見渡してからふたりに向き直り、「もし時間があるなら」と告げるのでした。
「もしよければ、教えるよ」
 「今、人が空いているからね」と眼鏡の店員さんはがらがらの店内を指さして笑いました。眼鏡の奥のその瞳があまりにも優しそうだったので、その親切心をむげに断る気にもなれませんでした。ふたりは顔を見合わせて頷いてから、眼鏡の店員さんに対して素直に「お願いします」と頼んだのでした。
 眼鏡の店員さんはその親切に取り付け方法を教えてくれました。そして、その合間に眼鏡のお兄さんはそれをいじりながら言うのでした。
「君たち、駐車場に落書きして怒られてたでしょう?」
「知ってたの!!!?」
 ふたりは、自分たちが思っていたよりも悪い意味で有名だったということに驚いて、問い返しました。すると、眼鏡の店員さんは「二階からも道路がよく見えるんだよね」と苦い笑いをその頬に浮かべながら、窓の外に指を指しました。エドとアルが窓の方に目を向けると、うっすらとではありましたが落書きの跡が残っていて、ふたりはただただ俯くしかありませんでした。けれども、店員さんは「でもさ」と言葉を続けてみせるのでした。
「君たち、悪戯っ子なのかと思ってたけど、おつかいするなんて、いい子じゃないか」
 お兄さんは穏やかにそう告げました。けれども、その言葉に今度はふたりが苦笑いをして。そして、アルが「おつかいではないんです」と申し訳なさそうに眉を下げながら、言うのでした。アルは、「内緒なんですが」と前置きをして、ここにきた理由について告げました。
 話をすっかり聴き終わると、お兄さんは眉を下げて優しそうに微笑みました。そして、言うのでした。
「君たち、優しいね」
「別に、普通だよ」
 エドがそう言って瞳を逸らしました。けれども、その頬が赤く染まっていたのを見て取ったのか、眼鏡の店員さんは「やっぱり、いい子だよ」とその顔に温和な笑みを浮かべてみせたのでした。
 そうして、取り付け方について説明を聞き終えたふたりは、「ありがとう」とお礼の言葉を告げました。お兄さんは二階の階段のところまでついてきて、「なにか不具合や分からないところがあったら、連絡してね」と言ってくれました。ふたりは眼鏡の店員さんに軽くお辞儀をして、階段を降りていきました。すると、背中からまたもや優しい声が追いかけてきたのでした。
「いいクリスマスを!」

 そうして、ふたりは最後に、花屋さんを目指しました。
 花屋の店員さんは、軒先で道路に背を向けて立っていました。どうやら、草花に水を遣っているようでした。
 蛇口を閉める花屋の店員さんの背中に「こんにちは」とふたりは挨拶をしました。すると、花屋の店員さんは少し驚いて振り向いてから、「あら、こんにちは」と笑って、それから少し意地悪に言うのでした。
「またやんちゃしにきたの?」
 花屋の店員さんに、エドは「違うよ」と反論するのでした。
「今日は、木を買いにきたんだ」
 エドがどこか自慢気な調子でそう告げると、花屋の店員さんは、その茶色がかった金の瞳をパチパチと瞬かせてから、「あら、珍しいわね?」と不思議そうに首を傾げました。ふたりは花屋の店員さんのことを信頼していたので、エドは「内緒だけど」と前置きをして、理由を話したのでした。
 すると、花屋の店員さんはその話を聞いて、いつもよりも柔らかな微笑みを浮かべて言いました。
「あなたち、とってもウィンリィちゃんのことが大好きなのね」
 エドは、その言葉を聞くなり「はあ!?」と言って大袈裟に驚きました。「単に、あいつは家族みたいな存在で」とエドが言い訳のようにも聞こえる言葉をエドはつらつらと話しました。けれども、その頬に赤みが差しているのを見て、アルと花屋の店員さんはこっそり目を合わせて微笑ったのでした。
 エドは一通り言葉を言い放った後に軽く咳払いをして、「とりあえず、木見せてよ」と場を仕切りなおすかのように告げました。花屋の店員さんもとりあえずはそれに頷いて、ふたりを店の中へと案内しました。
 店の奥には数種類の木々が並べて置いてあってふたりは「どれがいいんだろう」と思い、木々をじっと眺めました。けれども、普段は植物にあまり興味がないためかどれがいいのか見当がつかなくて、ふたりは数十分もの間ずっと悩んでいました。すると、不意に花屋の店員さんが屈んで、ふたりの顔を覗きこみました。そうして、その瞳に優しい色を浮かべながら、花屋の店員さんは問うのでした。
「ねえ、クリスマスにまつわるヤドリギの話、知ってる?」
 ふたりは、お姉さんの瞳を見つめて一瞬黙り込んでしまいました。けれども、すぐさまエドはその金色の瞳を細めて、呆れたような口調で言うのでした。
「それって、クリスマスの日にヤドリギの下で一緒になった人はキスをしてもいいってやつ?」
 花屋の店員さんは「よく知ってるわね」と言って一瞬目を丸くしてみせました。けれども、エドは「伊達に図書館通いしてない」とでも言いたいかのように、得意気に鼻をスンと鳴らしてみせたのでした。そんなエドに向かって、アルは「ボク、知らなかったよ」と驚いた様子で告げました。
「知ってても、役に立たないだろ」
 エドがそういうと、アルは「そんなことないよ」と反論するのでした。
「知ってたら、必ず役立つことがあるって」
 アルはそう言って笑いましたが、ここで議論を交わしていてもすべきことは解決しないので、アルの言葉は無視して、とりあえずは花屋の店員さんとと向き合って告げたのでした。
「出来ればヤドリギじゃなくて、それっぽいのがいいんだけど」
 花屋の店員さんは「そう」と言って、どの木がいいかを一緒に悩んでくれました。ふたりは花屋の店員さんのアドバイスを聞きながら慎重に木を選んで、やっとの思いでどれを買うか決めました。
「お姉さん、これお願いします」
 アルがそう言うと、花屋の店員さんは小さく瞬きをしました。それから、その頬を小さく緩めてみせたのでした。花屋の店員さんは「いい子には特別に値引きしてあげるわ」と、唇に人差し指を添えて告げました。ふたりは「悪いよ」と遠慮しました。けれども、お姉さんは「じゃあ、大きくなったらまた誰かに贈る花を買いに来てちょうだい」と言いました。ふたりは渋々ではありましたが、それに小さく頷いてみせたのでした。
 そして、エドは今までの袋を全部アルに持たせて、かわりに木を持ち上げました。お姉さんはそんなエドの様子を見て少し心配しましたが、「自分の力で持って帰るんだ」というエドの言葉を聞いて、諦めたように眉を下げて言うのでした。
「がんばってね、ふたりとも」
 ふたりはその言葉に「ありがとう」と返して、さようならの挨拶をしてから歩き始めたのでした。そんなふたりの背中に向かって、またも柔らかな声が追いかけてきたのでした。
「いいクリスマスを!」

 帰り道は、すっかり真っ暗になってしまいました。出来るだけ早く帰りたいとふたりは焦りましたが、木は思ったよりも重く、合間合間に休憩を入れないと歩くのがとても大変でした。
 ふたりが休憩して息を整えていると。不意に、ふたりの背中の方から「チャリンチャリン」という鈍い金属音が響きました。驚いて振り向くと、そこには見覚えのある青の制服が自転車にまたがっていました。
「やあ、こんばんは」
 そう挨拶をしたのは、この地域の管轄のお巡りさんでした。そのお巡りさんは、やんちゃな三人にいっつも注意をしてくる人でもあったので、エドは途端に不機嫌そうに眉をしかめてみせました。けれども、そんなエドの様子には構わずに、お巡りさんは爽やかな笑みを浮かべながら、颯爽と自転車を降りました。そして、その黒髪を右手でさっと梳いて整えたのでした。その姿が、不自然なほどに自然に似合って、それが気に入らないエドは、その眉間の皺をますます深くしたのでした。
「こんばんは」
 エドは、不機嫌な様子を隠そうともせず、素っ気なく挨拶をしました。そんなエドに苦笑をしながら、アルもお巡りさんに挨拶を返しました。
「子どもはもう帰る時間だよ」
 お巡りさんは、ふたりの顔を覗きこんで尋ねました。それは、まるでなにかをあやしんでいるかのような質問でした。そんなお巡りさんの質問に
ふたりが黙り込んでいると、「まさか、またなにか悪戯をしようとしてたのかね?」とお巡りさんは質問を重ねてきたのでした。
 その言葉に思わずエドは「違えよ!」と大声を出していました。「ほう?」とお巡りさんは聞き返してきた時に、ふたりは「はめられた」のだということに気付かされました。エドは心底悔しそうに歯を噛みしめてみせましたが、答えないわけにもいきませんでした。アルは「内緒だけど」と前置きをして、理由を説明しました。すると、お巡りさんは「ふむ」とその目を細めながら口元を意地悪に歪ませ、言うのでした。

「レディーのためとはやるじゃないか、見直したよ!」
 嫌みともとれるようなその言葉に、エドは
「見直したとはなんだよ!」と食ってかかりましたが、お巡りさんに「褒めているんだ、素直に子どもらしく喜びたまえ」と言いくるめられてしまうのでした。エドが歯痒い思いをしていると、不意にお巡りさんは真剣な顔を見せて、「けど、そういうことなら仕方ないな」と小さく呟きました。
 そして、お巡りさんは自転車に颯爽とまたがり、「寄り道しないで帰りたまえ」とふたりに忠告するのでした。言われなくてもという意をこめて、エドはお巡りさんに舌を出してみせました。お巡りさんは、そんな仕草でさえも爽やかに笑って流してしまうのでした。
 そうして、ふたりは「じゃあ」と軽くお巡りさんに挨拶をして、立ち去ろうとしました。そうして、二・三歩歩き始めた時に、背中からまたもや温かな声が追いかけてきたのでした。
「いいクリスマスを!」

 そうして、ふたりは思い荷物を交代しながらも持ち運び、やっとの思いで自宅に着きました。時刻はすでに夕食のごはんの時間を過ぎていましたが、本に夢中になりすぎて時間に間に合わないことは度々あったので、ふたりは連絡もしないで帰ったのでした。
 不意に玄関の階段を見遣ると、真っ暗闇に見覚えのあるシルエットが座り込んでいるのが分かりました。ふたりは思わず目を疑って、それをまじまじと見つめました。だって、近頃は彼女が学校以外に外出することなんて、全くなかった筈だったからです。ふたりが立ち尽くしていると、俯いていた彼女がこちらに気付きました。そして、気付くなりふたりに駆け足で近寄ったのでした。
 半ば呆然と立ち尽くしていたふたりに、彼女は。ほっぺたを、叩いたのでした。静寂に、小気味いい音が二回小さく響きました。
 ふたりは、とても驚きましたが、その碧い瞳に涙が滲んでいるのを見て、なにも言えなくなってしまいました。
「なんで、遅くなるならなるって、言わないの!!!?バカッ!!!!」
 彼女は、小さな擦れた声でそう告げて。それから、大声で泣き始めたのでした。
 エドとアルは、彼女がなぜそこまで泣いているのかよく分からなくて、戸惑いました。どうすれば泣きやむのか分からなくて、アルは「ごめんね」と謝罪の言葉を口にしました。そして、エドは「泣くなよ」と言って、ハニーブロンドのその髪を恐る恐る泣きました。すると、彼女は言うのでした。
「……あんたたちまでいなくなっちゃったのかと思って、心配したんだから……」
 彼女のその言葉を聞いて、ふたりは目を合わせて「ああ、そうか」と彼女の涙の理由をようやく理解しました。つまり、彼女は夕ごはんの時間になっても家に来ないふたりのことを心配して、泣いていたのでした。いつもだったら「どうせ、図書館で時間を忘れて本に夢中になっているんだろう」と思えることでさえも、きっと今の彼女にとってはそう言って流せることではなかったのだと、ふたりは今更ながら反省しました。
 ふたりは、ただただ「ごめん」と彼女に謝りました。そうして、しばらくしていると、大分彼女も呼吸が落ちついてきたようでした。彼女はその手で涙を拭って、そうして「もう大丈夫だから」と告げました。ふたりはそれを聞いて、ほっと息をつきました。ふたりは、その言葉に心から安心してしまっていたのです。そして、言いかえれば油断をしてしまっていたということでもありました。
「ところで、それなに?」
 ウィンリィのその言葉に、ふたりは思わず固まりました。
「家にツリーでも飾るの?」
 ウィンリィは、怪訝な顔をしてみせました。普段はツリーやらそんなものに興味がないふたりが、そんな買い物をしているだなんてあやしいに違いありませんでした。当の本人たちまでもが、そう思ってさえいました。
 エドは、アルに静かに目配せをしました。けれどもこの場を切り抜ける方法が思いつかないというかのように、アルはただ「降参だ」肩を上げて眉を下げてみせたのでした。エドも「やっぱり、そうだよな」という意を込めて、大きな溜め息を一つ吐いて。それから、彼女と向き合いました。
 エドは「内緒の筈だったんだけど」と前置きをして、理由を話しました。ウィンリィに、彼女の父親の代わりにツリーを贈ろうと思ったのだということを。そして、元気になってもらいたいと思ったことを――。
 彼女はそれを聞いて、言葉をなくしたようにしばらく黙りこみ、俯いてしまいました。そうして、次に顔を上げた瞬間には、ふたりを睨みつけて言うのでした。
「バカじゃない……」
 彼女のその言葉はちっとも素直ではありませんでした。けれども、その目が少し赤くなっていることにふたりは確かに気付いていました。しかし、それに気付いていないかのyほうにエドは「バカで悪かったな」と言ってそっぽを向いてみせました。そんな様子に、彼女とアルが笑い声をあげました。擦れていて泣いているみたいな笑い声が、真っ暗な夜に明るく響きました。

 そうして、三人はツリーを持ってウィンリィの家に向かいました。
 エドとアルは大目玉を食らう覚悟で敷居をまたいだのですが、ばっちゃんは「あんたたち、遅くなるんだったら連絡のひとつでもしなきゃ駄目だろう?」とだけ言って叱っただけでした。
 聞くと、どうやらあのあとにお巡りさんがばっちゃんに連絡の電話を入れてくれていたようでした。そのために、エドとアルはあまり叱られずに済んだのでした。けれども、ウィンリィのためにツリーを買ったという事の顛末に関しては、包み隠さずばっちゃんには知らされていました。
 エドは、それを聞いて小さく文句を言ったのでした。
「オレたちに『いい子にしろ』って言っておいて、秘密だって言ってたことをもらすなんて、あいつ卑怯じゃねえ?」
 ばっちゃんは、それを聞いてカッカッカッと大声で笑いました。


 クリスマスイヴの日、雪が降りました。ニュースでは数年ぶりに降り積もった雪を珍しがる人や喜ぶ子どもの姿が映されていて、それは小さな幸せの象徴でもあるように感じられました。
 その日、三人は一緒に過ごしました。午前の間は、三人はクリスマスツリーを飾り付けました。エドは台座を持ってきてベツレヘムの星を飾り、イルミネーションをもみの木に巻き付けました。アルは、エドが落ちないようにしっかりと台座を支えました。その間、ウィンリィは赤いリボンを結びました。そうして、それから。ベルやクーゲル、キャンディ・ケーン、松ぼっくりやジンジャークッキー、エンジェルなどの飾りを三人は思い思いに飾り付けました。お昼にさしかかる頃には、立派なクリスマスツリーがいつもは殺風景なリビングを彩りました。
 お昼ごはんを食べてからは、ばっちゃんは腕によりをかけてご馳走の用意し始めました。三人は料理の手伝いや食器の用意、掃除などをして過ごしました。夕方には宅配のおじさんが、ばっちゃんが花屋に頼んでいたヤドリギの木を届けに来ました。金色の立派な髭をたくわえた宅配のおじさんは軽々とヤドリギを運び、リビングにあるソファーの隣にヤドリギを運んでくれました。そうして、準備が整ったのでした。


 その日の晩は、皆で食卓を囲んで楽しく笑いました。三人は七面鳥だとかアップルパイだとかシチューだとかサラダだとかピザだとか机の上に用意された豪勢なご馳走を片っ端から綺麗に食べ尽くしました。ほっぺいっぱいにアップルパイを頬張るウィンリィを見るばっちゃんの瞳は、心なしか少し潤んでいたようにエドには見えました。
 三人はやがてごはんを綺麗に食べつくすと、皆で机を片付けました。それから、カードゲームをしたり、テレビを鑑賞して過ごしました。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。
 エドが幸せな気持ちでソファーに腰掛けていると、
ばっちゃんが不意にベッドメイキングをするために二階へと消えていきました。そして、「ボク、手伝ってくるから」と言って、アルも後を追いました。そうして、エドとウィンリィはふたりきりでソファーに座りました。そうしてエドがツリーを眺めていると。不意に、隣から声が聞こえました。
「ありがとう」

あまりに突然な言葉に、エドは思わず「は?」と声のした方向を向きました。今部屋には、ふたりしかいないわけで。けれども、今のこのタイミングでお礼を言われる理由がエドには皆目見当がつかずに、エドは困惑した表情を顔に張り付けることしか出来ませんでした。すると、ウィンリィは間抜けそうにポカンとしているエドの顔を見、微笑って答えるのでした。
「ツリーを買うのに、貯めていたお金を使っちゃったんでしょう?」

「エドとアルの家のベランダに割られた貯金箱を置いてたのを見たの」とウィンリィは小さく呟きました。エドはウィンリィが少しだけ申し訳なさそうな顔をしてそんなことを言うので、慌てました。そんな顔をするためにクリスマスツリーを用意したわけじゃないのだと、エドはウィンリィに告げるのでした。
「大丈夫だから、気にすんな」
 そうして、ウィンリィの髪の毛をぽんぽんと優しく叩きました。すると、頭を叩かれたウィンリィは「うん」と小さく頷きました。けれども、それがウィンリィが心から納得した上の反応でないことがなんとなくですが、エドには分かりました。なので、エドはなにかを決心するかのように息を吸い込んで。それから、「あのさ」とクリスマスツリーを指さしながら告げました。
「あのさ、オーナメントのベル意味、知ってるか?」
 突然のエドの言葉に、ウィンリィは少し驚いたように目を見開いて、それから首を軽く横に振りました。エドはそれを確認して、言葉を続けるのでした。
「あれは、神様が誕生したのを知らせるベルなんだって」
「ふーん?」
「あとな」
 エドは、出来るだけ自然な体を装って言葉を続けるのでした。

「あと、ベルの音で迷子にならないようにだって」

 ウィンリィの動きが、止まったのが分かりました。けれども、「俺は、神様とかそういうの信じてないけど」と前置きをして、エドは言葉を続けました。続けるべきだと、思いました。
「きっと、迷わないでいけるよ」
 瞬間。ウィンリィの顔が、思わず歪みました。エドはそれを見て焦って、更に言葉を続けました。
「ツリーのベツレヘムの星は、希望を象徴してるとも言われててさ、だから、あのさ」
 すると、ウィンリィは「大丈夫だよ」と言って、寂しくも温かい微笑みを浮かべたのでした。
「分かってる。エド、ありがとう」

 その笑顔を、見て。エドは、なぜか、動けなくなりました。その切ないような泣きそうなどこまでも優しい笑顔を守りたいと、思って。そう思ったら、なぜだか。
 そして、エドが固まっていたその隙に。ウィンリィは、エドの頬に唇を寄せました。
「お礼のしるし」
 ウィンリィがそう言った時に。とうとうエドの思考まで、止まりました。エドの顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていくその様を見て、ウィンリィもつられたように顔が赤に染まってしまいました。
「あのね、ヤドリギの下で一緒になったらこうしないと駄目だって、アルが言ってたから」
 どこか言い訳がましい言葉を残して。ウィンリィは「あたしも、手伝ってくる」と言い、階段を駆け上がっていってしまいました。
 エドはしばらくそのままの姿勢でいましたが、そのうち熱を持った頬を手で押さえて。それから、「アル、あの野郎」とポツリと呟きました。そうして、大きな大きな溜め息を吐いたのでした。
 
そうして、平和なクリスマスイブの夜は静かに更けていきました。
 それはとても寒い日のことでした。けれども、とても温かな何かがそこには確かにありました。いずれ名前が付けられるであろう、何かが。

 そして、とうとう子供たちが待ちに待ったクリスマスの朝がやって来ました。
 昨夜三人で夜更かししてしまったために、三人は少しだけ寝坊をしてしまいました。三人は重い瞼をこすりながら、階段をおりました。そして、リビングの扉を開けると。
 リビングに置いていたもみの木の下に、箱が並べられていました。赤・青・黄色の柊の葉が印刷されている包装紙に包まれた三つの箱が、置いてありました。三人はもみの木の下に駆け寄り、それぞれの名前宛てのメッセージカードが添えられた箱の中身をビリビリと破り、急いで確認しました。
 エドとアルは有名な科学者の本が、ウィンリィには工具セットが用意されていました。そのどれもが三人がそれぞれとても欲しがっていた、けれども高価で手が届かなかったものでした。しかし、そのプレゼントを前に三人は「今年のサンタさんは気前がいいなあ」なんて言って、手ばなしで喜ぶなんてことは出来そうにありませんでした。なぜなら、サンタさんの正体を知らないほどに三人は幼くはなかったからです。
 
 エドとアルはプレゼントを手に、「こんな高価なもの、悪いよ」とソファーに座っていたばっちゃんに言いました。すると、ばっちゃんは「何を言ってるんだい」と笑ってみせるのでした。
「そいつは、サンタクロースからのプレゼントだろう?」

「そんなわけないよ!」

 エドとアルは反論をしましたが。ばっちゃんは、煙菅の煙をくゆらせて。そうして、口からフーと煙を吐き出しました。そうして、僅かばかりその瞳を細めて。口元に微笑を携えながら「おや、知らないのかい?」と、告げたのでした。

「いい子のところには、サンタクロースがやってくるんだよ」

















***
一年前に作ったネタです。
三人称が苦手すぎて、去年は書き上げるの諦めてました……笑
てか、雑貨屋さんやら電気屋さんやら花屋さんやらお巡りさんのくだり急遽入れて
なんか設定ガタガタですけど気にしないでください^^
てか、最後辺り力尽きました。
いつか直しますので、よろしくお願いします。
あと、日付詐称もすみません。
まあ、メリークリスマスということで!笑
そんなお話です。





拍手

PR

Trackbacks

TRACKBACK URL :

Comments

Comment Form