カレンダーabout当サイトは『鋼の錬金術師』の二次創作サイトです。公式とは一切関係ございません。 同人サイト様に限り、リンク・アンリンクともにフリーです。 http://kotonoha1o6tom.kakuren-bo.com/ プロフィール
HN:
とも
性別:
女性
職業:
社会人一年生
カテゴリー最新記事最古記事リンクカウンターアクセス解析 |
コトノハ倉庫管理人の二次創作妄想小説倉庫 since 2010.5.18PAGE | 87 86 85 84 82 79 74 73 72 71 67 | ADMIN | WRITE 2011.03.24 Thu 00:00:00 誓い
目が眩むような暑さだった。流れ落ちる額の汗をそっと手の甲で拭いながらも、足は止めずに半歩前を歩く”彼女”に向かって話しかける。出来るだけいつも通りの口調で。 「今日は暑いね」 すると”彼女”はまるで当たり前のことを言われているかのような口ぶりで、ただ「そうですネ」と素っ気なく頷いた。そして、彼女はその小さな身長――数年前よりもずっと大きくなったけれども――をすっぽり覆い隠しているマントを深く被り直す。そんな彼女を見ながらも僕は、ほうと小さく溜め息を吐いた。 まったく、誰かさんにそっくりだ。そんなことを僕は小さく考えたけれども、すぐに彼女がそんな風に思うのも無理からぬ話だと考え直す。だって、この街が暑いのは今に限ったことじゃない。シン国の最西に位置するこの砂漠の街は、一年を通して暑い。そういえば、ここに来てばっかりのとき暑さで倒れちゃったっけ――なんて他愛のないことをふと思い返す。 「あっちに行ったら、この暑さも懐かしくなるんだろうな」 思わずそうひとりごちると、半歩前を歩く小さな背中が少しだけ――多分彼女を知らない人間から見れば少し身動ぎしたようにしか思わない程度だろう――強張ったのが分かった。それを見て、僕は思わず苦笑した。 まったく。誰かさんと同じで本当に分かりやすい。 誓い 砂漠は広大で神秘に満ちていてでそれでいて、けれどもどこまでも無慈悲だ。それが僕が三年もの長きに渡って得た一つの答えだった。真昼は獰猛な獣のような灼熱の太陽が肌を射し喉の渇きを奪い、夜は昼間とは打って変わって不気味なくらいに穏やかな静寂が街を包む。 この砂漠での生活は、アメストリスのそれとは違って厳しい。けれども、僕はそんなにこの街が嫌いじゃなかった。だってこの街に暮らす人々は――険しい環境にいるからこそなのか――自己を奮い立たせるような明るさとたくましさを備えていたし、それに。例えば、今はマントで覆われた彼女の漆黒の髪が夕日に照らされて、そして彼女が目を細めて微笑う。そんな風景が、僕は嫌いじゃなかったから。 そんなことを考えながら小さなマントの後姿を眺めていると、不意にその小さな背中が立ち止まる。僕も、彼女に倣うかのように慌てて立ち止まる。そして視線を彼女から移すと、白いペンキで塗装された小屋――アメストリス人に友好の証として建てられた、少々この街には似つかわしくない――がいつの間にか僕の目の前に小さく佇んでいて。そうして、駅舎の前に辿り着いていたのだと気付かされたのだった。僕はそれが少し恥ずかしくって。思わず、右手でくしゃりと自分の頭を掻いた。そして彼女に話しかける。 「ここまででいいよ」 すると、彼女はまた背中を小さく強張らせて、それから言うのだった。 「いいエ、ちゃんと見送りまス」 彼女は僕の顔を見ずにそう告げたけれども、そうしない理由は明白だった。だって、そう答えた彼女の声が蚊の泣くようなか細い声だったから。今はマントに隠されていて見えないその瞳にだって小さな涙を浮かべているだろうことは容易に想像がついた。 切符を買っているときに、彼女はその手でマントの下で目の辺りを拭っているのが見えて。それを見て小さく笑うと、訊いてもいないのに「砂が目に入るのでス」と彼女は強い口調で言って背中を向けてみせたから。やっぱり予想通りだったって思って、僕はまた小さく微笑った。 それから僕は彼女に入場券を渡して。そうして、僕たちは線路を前に横に並んで汽車を待った。 改札を潜ると、人気は少なくて、そこは驚くほどに静かだった。汽車を待つ彼女は無言で俯いていて、何か愉快な話をするなんて雰囲気ではなかった。でも、あと10分ばかりある待ち時間をこのままに過ごすのも忍びないから。僕は爪先でコンコンと床を叩いて、両足の靴に付いた砂を落とす。そうして、それから。 「メイ、ありがとう」 僕は彼女に今までの感謝の礼を告げる。すると、僕の真横に立っている彼女の身体がまた少し強張った。そんな彼女を見て、僕はまた微笑ってしまう。彼女は「なにがおかしいんですカ?」とポツリと呟く。それは、僕に対しての彼女の批判であったわけだけれども。それを聞いて、ほんの少し申し訳ないと思った。だって。だってさ。それすらもさ。 そう思いながらも、また僕は一ヶ月前のそれを思い出して微笑ってしまう。 僕の横で小さく唇を尖らしている彼女は、僕が以前兄と一緒に旅をしていた時に出会った女の子だった。彼女は若いながらも錬丹術の使い手で、旅の最中には色々と彼女に助けてもらった。兄弟での旅が終わってからも、今している新たな研究について錬丹術に何かのヒントがあるのではないかという思いがあって。だから僕は各国を周りながらも、この砂漠の街を拠点として彼女から錬丹術の手解きを受けていた。そのために多くの時間を僕は彼女と共にここで過ごしてきたのだ。彼女との日々は、今や僕にとって日常となりつつあった。 けれども転機が訪れたのは、一ヶ月前に兄から貰った手紙で。そろそろ兄と僕がそれぞれにまとめていた膨大な研究を、一回ふたりで検証してみようということになったのだった。そのために要る時間がどれくらなのか僕には見当がつかなかったけれども、少なくともシン国にはしばらくの間来ることが出来ない。それだけは確かな事実だった。 「一年は戻らないかも」 一ヶ月前に「いつ戻るんですカ?」という問いを彼女にぶつけられたときの僕の答えを聞いて、彼女はまるでこの世の終わりみたいな顔をしてみせたのだった。 僕だって、彼女との別れが悲しくないなんてことはなかったのだ。ただ、素直すぎる彼女が――。 「アル様は寂しくないんですカ?」 不意に、彼女がポツリと呟いた。僕はその問いにすかさず「勿論」と答える。 「恩人と別れるのは、悲しいよ」 本音とは違う、けれども本当でもあるその言葉が、思わず喉の奥から転がってしまったけれども。それすらもまたしょうがないことだった。そんな僕の言葉に彼女はどこか納得しかねているというような様子で、またしばらく口を噤むのだった。 「メイ?」 彼女が僕になにを求めているのか。彼女にとっては、そのことを僕は知らない筈だったから。だから僕はただ、彼女の名を呼ぶ。呼びなれた彼女の名前を何度も。何度も。しばらくの間、僕はそうしてみせた。ずるいとは分かってはいたけど、だけど。だって、それすらもしょうがないことなんだ。 それから、時計の針が一周はしただろうか。とにかくも、僕が感じていたよりも短い時間が経った後に。彼女は突然、僕の眼前に左手を掲げてみせた。 「約束でス、絶対また会いに来てくださいね」 僕は最初彼女が僕に握手を求めているのかと思ったけれども。よく見ると、その手は小指だけが立てられていて。僕は彼女が為さんとしてることの意味がよく分からなくて、思わず首を傾げてみせた。すると、彼女はそんな僕を見て「我慢ならない」といった様子で、僕の左手を小指だけを立てた形にしてみせる。 そうして、彼女は僕の小指に彼女自信の細い小指を絡め、歌を歌い始めた。彼女のソプラノが小さく心地よく、耳に響く。 指切りげんまん 嘘ついたら針千本飲ます 指切った 彼女は一気に歌い上げると、照れ隠しをするように早口で「東の島国から伝わった約束のおまじないでス」と目を伏せたままに告げた。 「それは、どういうおまじないなの?」 絡まった小指はそのままに僕がそう問うと、彼女は俯いたままに答えるのだった。 「約束をやぶったら、アル様を100回叩いて、針を千本飲ませまス」 そういうおまじないなんでス、と彼女は淡々とした口調で言ったけれども。おまじないと言うよりは、呪いのようなそれに僕は笑わずにはいられない。少しだけ噴出して、それから思わず歪む口元を隠しながら彼女に告げる。 「随分と物騒なおまじないだ」 彼女はその言葉に不満そうに唇を噛んでみせた。だけど。だけどさ。僕だって不満と言えば不満なのだ。「それは押しつけではないのか」と、僕は言いたい。だって、彼女は僕の断りも得ないままに、勝手に約束を結んでしまったのだ。一方的なそれを。そのことを「身勝手だ」なんて文句を言おうものなら、彼女はきっと僕を睨みつけるだろうから口には出さなかった。けれども、溢れる笑いを抑えることなんて到底出来なくて。 そうしていると、彼女は不意に絡まっていた小指を離して。それから俯いたまま、また僕に問うのだった。今度は少し、語気を荒げて。 「アル様は本当に本当に寂しくないのですカ?」 駅の床に、ポタリポタリと滴が落ちる。ここは、砂漠の街だから、雨なんて滅多に降らなくて。だから、それが何かなんてことは、すぐにその雫を見て。彼女に答える代わりに、僕はそっと微笑った。だって。だってさ。 たぶん、僕は君よりも、ずっとずっと身勝手だから。だから、多分微笑えるんだよ。 僕も君と別れるのが、寂しい。それは紛れもない事実で、唯一の真実でもあった。けれども、だからこそ思わずにはいられないんだ。しょうがないんだよ。 僕は、君の瞳に浮かぶ涙が嬉しい。一ヶ月間に「しばらく会えない」と言ったときのあの顔も、今も君が流してくれる涙の理由でさえも。だって、それはそういうことなんだろう? だから。だから僕はさ。 でも、やっぱり。 そう思いながら、顔に掛かるマントを引っ張る彼女を僕は見下ろす。 目の前の君の瞳から涙が落ちる度に「ごめんね」と胸の内で小さく思わずにはいられない。それも本当のことなんだよ。だからそのお詫びというわけでは決してないわけだけれども。 「僕の国にも、おまじないがあるよ」 努めて優しい口調で、僕は告げる。 「おまじないというか、誓いと言ったほうがいいんだろうけど」 そうして、僕は彼女の顔を覆っている白いマントをめくる。僕は「教会でするあの仕草にどこか似ているな」なんてことを思って、少し笑った。彼女は突然なことに焦って慌てて顔を隠そうとしたけれども、手遅れで。僕は 腫れた目元を眺めながら、告げる。 「おんなじおまじないなら、僕はこっちの方がいいな」 そうして、一瞬不思議そうな顔をしてみせた彼女のそれに。そっと、触れる。 彼女のそれは、涙の味がして、とてもとても甘かった。 それから。僕はそっと手を放して。そして、彼女の瞳をそっと覗きこむ。 彼女はというと。なにが起きたか分からないといった様子で、口を閉めるのを忘れてしまっているかのようにポカンとしていた。ついでに、涙を流すのも忘れてしまったかというように、その瞳からも雫は消えている。やっぱり、僕はそれすらも嬉しくて嬉しくて仕方なかった。ねえ、だって。だってさ。 すると、次の瞬間。 「これは、どういう意味ですカ?」 彼女は喉の奥から搾り出したような声で、僕に問うた。僕は彼女が何を尋ねているのかが分からなくて。思わず「え?」と間抜けな声を出す。すると僕を真っ直ぐに見据えたまま、彼女はまた震えた声で言うのだった。 「叩かれるのは嫌でス。針も飲めません」 その彼女の台詞に。僕は、堪えきれずに声を出して笑ってしまう。 彼女はというと、分かりやすすぎる人間だ。それは長所でもあり、同時に短所でもある。だって、僕もこんなに分かりやすいのにな。そう思って微笑うと、僕の名を呼びながら、彼女はその真っ赤に染まった頬を膨らませた。 一拍置いて。そんな彼女に、僕は「とりあえずは、さ」と呟く。 「とりあえずは、君の薬指ともいつか約束をするってこと」 言ってから。「ああ、違うな」と胸の内で呟く。僕は彼女が何を求めてるのか、それを知ってる。彼女は僕と同じで、紛れもない事実を、唯一の真実を欲しいだけ。だから。 線路からガタンゴトンと音がする。さよならの時間が来るのが、分かった。僕は鞄を右手で強く握り直して。それから。 「あのね、メイ」 そうして、それから。彼女の耳元に顔を近づけて、たった三つの音を彼女に贈った。 その瞬間。耳障りなくらいに大きな気笛があたりに鳴り響いた。けれども、それでよかった。駅舎でこんな恥ずかしいことをやってただなんて、他の誰にも知られたくはなかったし――仮にとはいえ、公衆の面前こんなことをやってるだなんて知られたくはなかった――それに。それに、彼女に囁いた三つの音は、彼女だけに届けばよかったから。 僕の言葉で別れの際だというのに、彼女はくしゃくしゃの顔と微笑った。その癖、その頬には大粒の涙がぽろぽろと流れていて。その涙は、今までみたどれよりも素敵に思えた。 いつかこんな透明な石を彼女に贈れたら――だなんて。どこか見当違いなことを、僕はふと思ったのだった。でもきっと、それはしょうがないことだったんだろう。 だって、それは目の眩むようなあつい日の出来事だったんだから。 *** 勝手にプレゼントすみません…orz そして、さり気に初アルメイ。 ついったでちょっと前に呟いてた140字を膨らませたお話です。 なんだかまとまりあるんだかないんだかな話なりました、すみません(…) ぼちぼち修正かけてくかもです。 で、ミ.スチルの365日聴きながら作業してました。 あと、マントのくだりとか分かりにくくはありますが、 ラ.ルクのスノドロの「あなたはまるで~」聴いてなんとなくつけたしたんです、すみません。 全体的に分かりにくくてすみません。 そんなお話です。 PR TrackbacksTRACKBACK URL : CommentsComment Form |